step2、麻酔を行い、抜歯をした後、移植歯の歯根形態に合わせて骨を削る。
step3、親知らずをそっと抜く。
step4、抜歯した穴に親知らずを挿入し、軽く固定する
step5、3週間後、根管治療を行う。
step6、動揺や打診が問題なければ被せ物を被せる。
症例写真
写真の左上奥から2番目の歯を抜歯し、左下横に埋まった親知らずを移植する。
①抜歯の診断が妥当と思われる左上の歯
②抜歯した後、抜いた穴を親知らずが入るように形成する
③移植後2~3週:根管治療を開始する。
樋状根(といじょうこん) という、歯根の断面が特殊な形をしていて治療の難しい歯であった。親知らずは樋状根が多い。
④術後1年:普通の歯として機能している。
4.歯牙移植が成功するカギとは
4-1.抜歯後はしばらく時間をあける
歯と抜いた穴の間に血液が溜まって生着するため、出血が少ないと生着しないことがあります。また、出血があっても血を貯めることが必要なので、理想的には抜歯して、しばらく時間をおいて、上皮がある程度再生してからのほうが確実と言えるでしょう。
4-2.CTでしっかり確認してもらう
移植する歯の形態をしっかり把握してから望むべきですので、CTはあった方がいいでしょう。
4-3.根管治療の得意な歯科医師の施術を受ける
移植後は基本的には根管治療が必須なので、根管治療が得意な先生にやってもらった方がいいと思います。
私は以前、10年以上前に移植して根尖に病気が出来た歯のやり直しをしたことがあります。せっかく、移植がうまくいっても、根管治療がうまくいかないと台無しになってしまうこともあるのです。
その時の症例を紹介します。
右下の奥から2番目の歯。『10年前に別の歯医者で移植を行ったが、最近になって膿が出てくるようになった。』との事。
根管治療を行った後、膿は止まった。治療としては不格好ではあるが、不規則な根管も多いため、特に親知らずはこのような治療になる事も考えられる。
5.インプラントとの違い
・歯牙移植の場合、歯根膜が残るので噛んだ時のかたい・やわらかいなどの感覚が自然。
・歯牙移植の場合、歯と同じなので、矯正で動かすことができます。
・歯牙移植の場合、歯と同じなので、何かしらのトラブルがあった時に抜くことがインプラントに比べて容易に行える。(インプラントの除去は大変)
まとめ
症例さえしっかり見極められれば、移植はインプラント以上に患者さんに利益のある治療法であると思っています。
しかしながら、歯科の大学教育では、具体的な手技、診断はおろか、移植事態を教えていない学校が殆どなので、移植に深い知識のある歯科医師はごく少数であることは間違いありません。
今後の歯科教育の場で、移植が注目されていくことを切に願います。
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