歯列矯正で抜歯が必要な理由と非抜歯の4つのデメリット

痛みは痛み止めを飲んでいればほとんど抑えられますが、食べ物を食べたり、口を開けたりした時にしばらくの間鈍い痛みを感じることがあります。

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2-4. 過剰歯の抜歯

過剰歯(かじょうし)と呼ばれる余計な歯が歯茎の中に埋まっていると、歯の隙間が空いてしまったり、歯並びが悪くなる原因になります。さらに過剰歯は矯正治療で歯を動かす時に邪魔になるだけでなく、隣の健康な歯の根を傷つけてしまうこともあるため、見つけたら抜歯しなければなりません。

過剰歯はほとんどの場合萌えることができずに歯茎の中に埋まったままの状態になっているので、歯茎を切ったり骨を削ったりする必要があります。これも小臼歯や親知らずの抜歯と同じ様に歯を抜」く時の痛みは麻酔の注射をする時だけですが、深く埋まっている歯を抜くほど骨を削る量が大きくなるので治るまでに時間がかかります。

痛み止めを飲めば痛みはほとんど抑えられますが、傷が治るまでは食べ物を食べたり、舌が触れたり、唇が触れたりすると、じわじわ鈍い痛みを感じます。骨を削って歯を抜く場合は、痛みに加えて顔も腫れるということも覚えておきましょう。

3. 抜歯をしないことによるデメリット

それでは、もし本来抜歯をする必要があるのに、無理やり抜歯をしないで矯正治療をしてしまったら、一体何が起こるのでしょうか?

3-1. 歯茎が下がる

成人の矯正でよく起きる問題は矯正治療の後、歯茎が下がって歯と歯の間に隙間ができてしまうというものです。

これには2つ原因があります。

1つは、矯正治療中歯ブラシが上手くできていないと歯周病が進んでしまい歯茎が下がる、というものですが、こちらは正しい歯ブラシの仕方を学んで毎日歯を清潔に保っていれば防げる問題です。

今回重要なのは次の2つ目の問題で、成人では歯を歯槽骨(歯が萌えている土台の部分の骨)のある範囲より外側に動かし過ぎると、歯の根の部分が歯槽骨から出てきてしまい、その結果として歯茎が下がってしまうということが起きてしまいます。

顎の骨がまだ成長している段階の成長期では、ある程度は歯並びを広げても歯槽骨も成長して適応できるため、歯の根が歯槽骨から出ることはなく歯茎が下がることはありませんが、やはり限度はあります。

3-2. 猿のように口が出た顔になる

歯が大きく歯槽骨の幅が小さくて、本来抜歯が必要な矯正治療であるにも関わらず無理に抜歯をしないで矯正治療を行うと、前歯が並びきらない分外側に飛び出してしまい、その結果口を閉じても口元が出て、もっこりした感じになってしまいます。

そうなってしまうと見た目が悪いだけでなく、無意識に口を閉じることができなくなってしまうため、寝ている時口呼吸になり口の中が乾くため虫歯や歯周病が進みやすくなってしまいます。

3-3. 一番後ろに萌える12歳臼歯が埋まってしまう

歯を抜かないで矯正治療をする方法の1つに、歯を並べる隙間を作るために6歳臼歯を奥に移動する方法があります。しかし、これも歯槽骨がある部分を越えて歯を移動してしまうと、食べ物を咬み潰す重要な役割を担う大臼歯である一番奥の12歳臼歯の萌える場所が無くなってしまい、本末転倒の結果になってしまいます。

3-4. 後戻りが起きやすくなる

後戻りというのは、矯正治療を終えて完全に正しい歯並びと咬み合わせに治った後に、歯が矯正治療前の元の位置に戻ろうとして、歯並びが悪くなることです。これは抜歯で矯正治療をしても歯を抜かないで矯正治療をしても、リテーナーという装置を決められた時間しっかりと使わなければ必ず起こります。

しかし、歯の大きさと歯槽骨の大きさのバランスで、本来歯が並びきらないスペースに無理やり歯を並べた状態であれば、やはり後戻りは起こりやすくなります。

4. 抜歯の必要がないケース

抜歯をしないで矯正治療ができる条件は何でしょうか。乳歯がすべて永久歯に萌え換わった中学入学頃の、歯並びと顎の成長のバランスによって決まります。

つまり、乳歯が残っている間に矯正治療を開始して(1期治療)、乳歯がすべて永久歯に萌え換わるまでに、顎の成長を引き出すことで、抜歯をしないで矯正治療ができる条件を満たせるかどうかです。

1-2. で示した通り、すべての歯が永久歯に萌え換わるまで放置してから矯正治療を開始すると、65.4%の日本人は永久歯を抜歯しなければ正しい歯並びに治すことができませんが、顎の成長が多く残っているうちに早く矯正治療を始めるほど、顎の成長を引き出して、抜歯をしないで矯正治療ができる可能性が高くなるということです。

それでは具体的に永久歯の抜歯が必要ないケースの条件を確認して行きましょう。

4-1. 上顎と下顎の顎の骨の前後的なバランスが整っていること

奥歯で咬んだ状態で、上下の歯の咬み合わせを横から見た時、犬歯から後ろの上下の歯は、山と谷が咬み合う様に、互い違いに咬み合う関係になっているのが正しい咬み合わせです。

抜歯をしないで矯正治療ができる条件の1つは、乳歯がすべて永久歯に萌え換わった中学生以降の時点で、奥歯が互い違いに咬み合っている状態から、上下の歯の前後的なずれが2mm以内程度であることです。

4-2. 上顎と下顎の顎の骨の左右的なバランスが整っていること

奥歯で咬んだ状態で、上下の歯の咬み合わせを正面から見た時、上下の前歯の境目は、一直線に咬み合う関係になっているのが正しい咬み合わせです。

抜歯をしないで矯正治療ができる条件の1つは、乳歯がすべて永久歯に萌え換わった中学生以降の時点で、上下の前歯境目のずれが2mm以内程度であることです。

4-3. 上下の永久歯の本数の過不足が無いこと

親知らずを含めずに、萌えて来なければならない歯の数を数えると、上下左右それぞれ7本ずつで合計28本です。生まれつき部分的に永久歯がない先天性欠損(せんてんせいけっそん)の部分があると、その部分で上下の咬み合わせがずれてしまい、抜歯をしないと矯正治療ができない可能性があります。

上の歯が1本少ない場合は、抜歯をしないで矯正治療ができることも多いですが、もし下の歯だけが1本少ない場合は、上の歯の抜歯をするか、下の歯1本分をデンタルインプラント、入れ歯、ブリッジのうちいずれかで補う必要が出てくるため、矯正歯科医と一般歯科医の連携が大切になるケースです。

4-4. 横から顔を見た時の上下の唇の位置が、鼻の先と顎を結んだ直線(エステティックライン(E line))より前に出ていないこと

奥歯で咬んだ状態で唇を閉じて鏡で横顔を見た時、上下の唇の位置が、鼻の先と顎を結んだ直線上辺りから内側になっているのが正しい咬み合わせです。これも抜歯をしないで矯正治療ができる条件の1つです。

4-5. 歯並びのずれが軽度なこと

抜歯をしないで矯正治療ができる条件の1つは、上下それぞれの歯並びの重なりが5mm以内程度であることです。

まとめ

私達矯正歯科医も、矯正治療で患者さんを正しい歯並びと咬み合わせに治せるのであれば、当然非抜歯(歯を抜かない)の方がいいと考えています。

しかし、この先どんなに矯正治療の技術が進歩しても、「すべての患者さんに非抜歯で矯正治療ができる」ということは、絶対にありません。

患者さんにメリットがあるからこそ、「抜歯して矯正治療をする」というプランが出るのです。

自分の歯並びは、「抜歯が必要なケースなのか、抜歯が必要ないケースなのか」、しっかりと診断を受けた上で、「抜歯する場合のメリットとデメリット、非抜歯の場合のメリットとデメリット」について説明を聞いて納得した上で、矯正治療を始めましょう。

宮島悠旗
Author: 宮島悠旗(歯科医師/日本矯正歯科学会 認定医)

著書:国際人になりたければ英語力より歯を”磨け”  世界で活躍する人の「デンタルケア」

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