痛み止めを飲めば痛みはほとんど抑えられますが、傷が治るまでは食べ物を食べたり、舌が触れたり、唇が触れたりすると、じわじわ鈍い痛みを感じます。骨を削って歯を抜く場合は、痛みに加えて顔も腫れるということも覚えておきましょう。
親知らずの抜歯
親知らずが歯の動きを邪魔してしまう場合や、歯並びを悪くする原因になっている場合は、親知らずを抜歯する必要があります。親知らずは多くの場合、完全に萌えておらず半分もしくは完全に歯茎の中に埋まっているので、抜く時には歯茎を切ったり骨を削ったりすることが多いです。
実際に歯を抜く時に痛みを感じるのは麻酔の注射をする時だけです。歯を抜いた後は、親知らずの向きがどのぐらい傾いているか、またどのぐらい深いところに埋まっているかによって骨を削る量が違いますが、骨を削った量が多いほど、痛みも出る上、顔も腫れます。
痛みは痛み止めを飲んでいればほとんど抑えられますが、食べ物を食べたり、口を開けたりした時にしばらくの間鈍い痛みを感じることがあります。
過剰歯の抜歯
過剰歯(かじょうし)と呼ばれる余計な歯が歯茎の中に埋まっていると、歯の隙間が空いてしまったり歯並びが悪くなる原因になります。
過剰歯はほとんどの場合、萌えることができずに歯茎の中に埋まったままの状態になっているので、実際に歯を抜く時の痛みは麻酔の注射をする時だけですが、歯茎を切ったり骨を削ったりする必要があるため、これも深く埋まっている歯を抜くほど傷が大きくなるので治るまでに時間がかかります。
痛み止めを飲めば痛みはほとんど抑えられますが、傷が治るまでは食べ物を食べたり、舌が触れたり、唇が触れたりすると、じわじわ鈍い痛みを感じます。骨を削って歯を抜く場合は、痛みに加えて顔も腫れるということも覚えておきましょう。
1-1-4. 永久歯が萌える時の痛み
歯が萌える時は、歯茎を突き破りながら歯が萌えて来るので痛みを感じます。
しかし、この痛みは少し気になる程度で短期的なものですので、全く問題ありません。
1-1-5. 装置を外す時の痛み
歯に接着している矯正装置を外す時には痛みを感じます。しかし、この痛みを感じるのは装置を外す一瞬です。
2. 痛みを和らげる方法
これまで説明してきた5つの痛みのうち、最後の装置を外す時の痛みだけは痛みを和らげる方法がありません。唯一の対策としては、痛いのが恐いからと言って抵抗して装置を外すのが長時間になるよりも、「どうせ痛いなら短時間で済ませた方が良い!」と腹をくくって、できるだけ一瞬で装置を外した方が結果的に患者さん自身も楽だということです。
ここでは、痛みを予防できる方法や和らげる方法を説明します。
2-1. 痛み止めの薬
2-1-1. 痛み止め服用の目安
矯正装置を調整する時の痛みには、1日1回を目安に痛み止めの薬を飲むことが有効です。ただし、痛み止めの薬には一般的な副作用としてお腹の調子が悪くなることがあります。
さらに、体に合わない人によっては、むくみ、発疹、蕁麻疹、眠気、発熱、かゆみといった症状が出ることもあります。また、長期に渡って連続で使っていると、薬が効きにくくなってしまう上に、胃が荒れて胃潰瘍になってしまうこともあります。
ですから、どうしても我慢ができない時に痛み止めを飲んで頂きたいです。毎月の矯正治療の痛みのピークの時期を乗り越えるまで、1日1回、月に5日程度までなら痛み止めの薬を飲んでも問題ありません。
2-1-2. 抗生物質が処方された場合
抜歯の後の痛みの対処法は基本的に痛み止めを飲むしかありませんが、深いところにあった歯を抜いた場合は、抗生物質を飲んで傷が治るまで歯を抜いた後の部分を、バイ菌から守ることで痛みや腫れを防いで傷が早く治ることに繋がります。もし抗生物質を出された場合は、必ず出されただけ飲み切りましょう。
2-2. ホワイトワックス
矯正装置が擦れて痛い場合、装置が擦れて口内炎ができている場合など、まずご自宅で簡単に対処できる方法として「ホワイトワックス」というものがあります。「ホワイトワックス」は半透明の粘土で、装置の周りにつけると粘膜に引っかかる摩擦が起きにくくなり、口内炎の原因の刺激と痛みを防ぐことができ、口内炎を予防したり治すことができます。
初めて矯正装置を付けた時はお守り代わりにホワイトワックスももらっておくと安心です。
2-3. 痛みを和らげる食事
2-3-1. 矯正装置を調整した時の痛みを和らげる食事を採る
歯が強く咬み合ったり、固い物を咬んだりすると痛みを感じることが多いです。慣れるまでは柔らかい食べ物で栄養を採って過ごしましょう。特に装置を調整した直後は、食べ物を噛み切ることができないです。となると食事はあまり噛む力がいらない食事がお勧めです。
例えば、おかゆ、豆腐、野菜スープ、野菜煮込み、ハンバーグ、ミキサーを使った野菜ジュース、柔らかい麺類、ヨーグルト等です。最初は肉や魚をは大変ですが、みじん切りにして食べていただくことをお勧めします。
2-3-2. 矯正装置が変形したり、壊れたりする可能性が高い食べ物を控える
矯正装置が付いている時はキャラメル、ガム等粘着性のある物は控えましょう。装置が変形してしまうと痛みが出るだけでなく、歯並びが治るのも遅くなってしまいます。
もう1つ注意しなければならないのは、矯正装置に慣れてきた時です。矯正装置が壊れたり、外れたりする原因になるような固い大きなものを食べるのも控えてください。りんごやフランスパンのようなものを丸かじりしたり、固いせんべいのようなものを矯正装置で勢いよく咬むと間違いなく矯正装置が壊れます。
2-3-3. 口内炎に良い食べ物を食べて、悪化させる食べ物を控える
ビタミンB2、B6、A、Cの含まれている食べ物をしっかり食べて口内炎を治しましょう。不足すると口内炎、口角炎になってしまします。
口内炎を刺激しない食べ物でお勧めなのは、クリーム系のグラタン、シチュー、リゾットやつるっとした食感の豆腐、茶わん蒸し、ゼリー、ヨーグルト等です。それに口内炎を治すビタミンが多く含まれたものを加えた食事を採りましょう。ビタミンB2、B6、A、Cが多く含まれている代表的な食べ物はこちらです。
緑黄色野菜(ビタミンA、ビタミンC)、わかめ(ビタミンB2)、納豆(ビタミンB2)、ひじき(ビタミンB2)、レバー(ビタミンB2)、うなぎ(ビタミンB2)、ヨーグルト(ビタミンB2)、チーズ(ビタミンB2)、マグロ(ビタミンB6)、カツオ(ビタミンB6)、アボカド(ビタミンB6)、バナナ(ビタミンB6)
逆に唐辛子、カレー、キムチ等の香辛料が強い食べ物は口内炎を悪化させる原因になります。またキウイ、パイナップル、メロン等の粘膜を刺激する物も控えましょう。
2-3-4. 歯を抜いた後の傷を治す
歯を抜いた後の傷を早く治すために、食べた方がいいもの、控えた方が良い物は基本的に上の口内炎の場合と同じです。特に高温の物や刺激がある物は傷口が治りにくくなるので気を付けましょう。
5. 気を付けたいこと(痛みがある時にやってはいけない事など)
5-1. 痛み止めの薬や抗生物質(化膿止め)の薬
クリニックで出してもらった抗生物質の薬は、間違った使い方をすると薬が効かなくなる耐性菌を生み出すことになってしまうので、絶対に無断で飲むのを止めてはいけません。
痛み止めの薬は使い過ぎると、効果が出にくくなるだけでなく色々な副作用が出ます。また飲み合わせが悪い薬もありますので、他に薬を飲んでいる場合は必ず相談しましょう。
5-2. 装置を指や舌で触る
慣れない間はどうしても違和感があるので指や舌で装置を触りたくなりますが、指や舌を装置に引っかけて傷ができてしまったり、装置が変形する可能性があるので、気になっても装置を触るのは止めましょう。本来は何とも無くても、ずっと舌で装置を触っているとその刺激で下に口内炎ができてしまうこともあります。また食べ物が装置に挟まって気になる時も指で取ろうとすると装置が変形する原因になります。装置に食べ物が挟まった場合は必ず歯ブラシで取りましょう。
6. 歯科医院で診てもらうべき場合
矯正治療の痛みが強い時は、矯正装置の変形が原因の可能性もあります。この場合は、歯科医院に連絡して下さい。装置が変形したまま放置していると、噛むたびに擦れて口内炎や傷が大きくなるかもしれません。
まとめ
矯正治療の痛みは、矯正装置を調整するたびに出ます。これは、変えることのできない事実です。しかし、自然にダイエットできる等、矯正治療をポジティブに考えて、痛みと上手に付き合いながら、矯正治療を楽しんでいる方も多くいらっしゃいます。食事や生活スタイルを工夫し、そして矯正治療が終わった後の、綺麗な歯並びになった笑顔を想像して痛みを乗り越えて頂きたいです。
Author: 宮島悠旗(歯科医師/日本矯正歯科学会 認定医)
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