矯正治療は、「痛いから嫌だな」とか、「痛みが長く続くイメージだから、矯正治療は怖いな」と言う患者さんが多くいらっしゃいます。しかし、矯正治療を始めてみると「思ったよりも痛くなかった」や「我慢できる痛さだった」と言う声を聞きます。
確かに「痛み」には、個人差がありますので、すべての矯正治療中の患者さんに対して「思ったよりも痛くない」とは言いきれませんが、「痛みを感じる長さは、実はほとんどの方が想像しているより短い数日間」と言えるかもしれません。
今回は、矯正の痛みはどのようなものなのか?痛みはどのぐらい続くのか?また、対処法はあるのか?痛みの説明から対処方法をお伝えいたします。
1. 矯正治療は必ず痛みがでるのか
矯正治療で「全く痛みを感じなかった。」という患者さんは6%で、94%の患者さんは(個人差はありますが)、矯正治療中に痛みを感じていました(参照:「矯正歯科医院 経営学」 経営コンサルタント 野々村太郎のブログ)。ですから、ほぼ間違いなく痛みが出ると考えていただいた方が良いでしょう。
「どんなタイミングで痛みを感じるのか、それに対してどんな対処法があるのか」をしっかり知った上で矯正治療を始めた方ですと、痛みに耐えられなくて矯正を途中で辞める患者さんはほとんどおりません。
一言に「痛みが出る」と言うだけではイメージが湧きません。どんな時に、どれくらいの期間、どういう痛みを感じるのか、まずは状況に応じた痛みについて説明していきます。
1-1. 歯科矯正の痛みについて
歯科矯正の痛みは大きく分けると5つになります。
1-1-1. 矯正装置を調整する時の痛み
まずは下記のアンケート結果をご覧ください。
■ 「歯が動く痛み」について、装置を付けてから何日くらい痛みが続いたか?
1日 5%
2~3日 65%
4~5日 20%
6日以上 10%■ 「歯が動く痛み」について、最も痛かったのは何日目か?
初日 14%
翌日 75%
2日後 4%
3日後移行 7%
矯正装置を調整する際、歯には矯正力という力がかかります。イメージとしては歯が引っ張られたり押されたりする力で、その力を「痛み」と感じる方もいれば、「違和感がある」と感じる方もいらっしゃいます。矯正装置をつけてから、または調整して歯に力をかけてから、数時間経つと徐々に痛みを感じます。これは、歯が動き出した時に感じる痛みです。
しかしこの痛みは矯正治療を受けている期間ずっと続くわけではありません。
初めて装置を付けた時は1週間程度続くこともありますが、矯正治療が始まって数か月経つと慣れてきて、調整した後3日程度になります。矯正治療の通院、つまり調整は積極的に歯を動かしている時でも1か月に1回ですから、痛みのピークは1か月に1回3日程度だけということになります。しかも多くの場合何もしていない時には「違和感がある」程度で、食べ物を咬む時に痛みを感じるという方が多いです。
1-1-2. 矯正装置が舌や粘膜に擦れて起こる口内炎の痛み
こちらもアンケート結果からご覧ください。
■ 矯正治療中の痛みについて
装置があたって痛いと感じたことが「ある」 90%
装置があたって痛いと感じたことが「ない」 10%■ 唇や頬に装置があたる痛みについて、装置があたる痛みには慣れたか?
慣れた 94%
慣れない 6%■ 唇や頬に装置があたる痛みについて、装置があたる痛みに慣れるまでの期間は?
1週間以内 60%
2~3週間 30%
1か月以上 10%
出典:「矯正歯科医院 経営学」 経営コンサルタント 野々村太郎のブログ
お口の中は体の中でも刺激に対して最も鋭い感覚がある場所です。矯正装置には様々な種類があり、それぞれできる限り違和感が無いように工夫して作られていますが、どうしても粘膜が矯正装置で擦れると口内炎ができてしまうことはあります。また八重歯の様に特に歯並びが悪い部分は、その部分に装置を付けると始めのうちどうしても粘膜に強く当たってしまいます。
口内炎は多くの方が一度は経験されているので、どのような「痛み」なのかイメージしやすいと思います。装置が引っ掛かって口内炎ができると痛みが出ますが、粘膜に強く当たっている装置の部分を調整したり、コーティングして原因となっている刺激を無くせば、数日で口内炎が治まり痛みは無くなることがほとんどです。
さらに矯正治療が進むにつれて歯並びが整ってくると、装置が粘膜に強く当たる部分も無くなってくるので、口内炎で悩むことが多いのは矯正治療を始めて数か月間です。
1-1-3. 歯を抜く時の痛み
矯正治療では、「歯を抜く」こともあります。「歯を抜く」と言っても実はいくつかのシチュエーションがあります。
乳歯の抜歯
まず一番多いのは乳歯を抜くということです。乳歯を抜く目的は、永久歯に萌え換わる時に上手く萌え換われず邪魔になってしまっている乳歯を抜くことによって、乳歯の下から萌えて来る永久歯が変な方向に萌えるのを防ぎ、萌え換わりをスムーズに進めるためです。
実際に歯を抜く時に感じる痛みは、麻酔の注射をするときだけです。乳歯は永久歯に比べると根も短く元々萌え換わる歯なので、抜いた後は傷の治りも早くほとんど痛みは出ません。
永久歯の抜歯
普通に萌えている永久歯を抜歯する場合は大変ではありません。実際に歯を抜く時、痛みを感じるのは麻酔の注射をする時だけです。抜いた後も傷の治りは早く、痛み止めを飲んでいればほとんど痛みは出ません。
大変なのは、萌えることができずに歯茎の中に埋まったままの状態になっている永久歯を抜歯する場合です。実際に歯を抜く時の痛みは麻酔の注射をする時だけですが、歯茎を切ったり骨を削ったりする必要があるため、深く埋まっている歯を抜くほど傷が大きくなるので治るまでに時間がかかります。
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