また、フッ化物配合歯磨剤の製品としてはペースト状のものの他に、泡状、スプレー状のものもあります。泡状、スプレー状の歯磨剤は、ペースト状の歯磨剤に比べフッ素の取り込みが早いため、歯磨きの時間が十分に取れない低年齢児や障害のある方におすすめです。
4-1-2. フッ素ジェル
フッ化物配合歯磨剤でのブラッシング後にフッ素ジェルを塗布する方法(ダブルブラッシング)が効果的です。
フッ化物は、様々の方法を組み合わせて使用することが推奨されています。
4-1-3. フッ素洗口
フッ化物洗口法はフッ化物洗口剤を口に含み30秒間ぶくぶくうがいをして吐き出します。
日本では、製品として発売されているものすべて、歯科医院で処方されます。歯科医師および歯科衛生士によるフッ化物洗口指導を受け、家庭で実施するか、小・中学校などで集団洗口をするのが主流です。
2015年9月18日に薬剤師のいる薬局・ドラッグストアでフッ化物配合洗口剤『エフコート』フッ素濃度225ppmが発売されました。
これまで医療用医薬品として実施されてきたフッ化物洗口は、小・中学校などでの集団洗口により、高いむし歯予防効果が報告されています。
フッ化物は水に溶けやすいため、フッ化物応用後は30分以上、可能であればそれ以上の時間、うがいや飲食を控えることが大切です。それでも唾液によってフッ化物は薄まります。
近年フッ化物洗口は、低濃度で使用しても長時間お口の中に留まることが報告されています。
4-1-4. その他
フッ化物添加デンタルフロスは、隣接面(歯と歯の間)のむし歯予防に有効です。
トゥースピックは、歯間空隙(歯と歯茎の間の空隙)の清掃に優れています。
4-2. 海外における特徴的な利用方法
海外では、フッ素は骨や歯などの硬組織に存在し、むし歯予防効果に優れていることから必須栄養素と考えられています。
4-2-1. 水道水フロリデーション
積極的にフッ化物を摂取できる水道水フロリデーションといい、家庭の水道水にフッ化物をいれ、飲料として摂取する方法です。
4-2-2. フッ化物配合錠剤
ヨーロッパでは、フッ化物配合の錠剤が薬局で販売されています。タブレットの感覚で摂取します。
4-2-3.フッ化物添加食塩
こちらもヨーロッパの岩塩にはフッ化物が混ざっており、食事で使用する塩分とともにフッ化物を取り入れています。
そのほか、フッ化物配合ミルク、フッ化物添加飲料水など、日本では行われていない方法でフッ化物を摂取しています。
4-3. 日本と海外での利用方法の違い
「甘いものを食べるとむし歯になる」と聞いたことがある人は多いと思いますが、日本は海外に比べて糖分摂取量が少ないです。しかし、DMF歯数(う蝕経験歯数)は高いです。
そのため、糖分摂取制限では、う蝕予防に限界があります。
日本は、先進国の中でも砂糖摂取量は圧倒的に少ないにもかかわらず虫歯が多いのが現状です。
このことから、甘いものを食べるのを禁止する指導だけでは、虫歯は減少しないことが示唆されます。他国は、フッ化物の導入が行き届いてることもあり、砂糖摂取量が多くても虫歯になりにくいこともこのデータから読み取れます。
5. フッ化物の安全性
世界保健機構(WHO)、食糧農業機構(FAO)、アメリカ合衆国食品医療品局(FDA)など多くの専門機関では、フッ素は骨の形成やむし歯予防に欠かせない必須元素(必要な栄養素)として捉えています。日本ではフッ化物に関する誤解が根強く残っていますが、このことが、フッ化物の普及を著しく遅らせる要因となりました。
まとめ
フッ化物の応用は、EBM(科学的根拠)に基づいたむし歯予防方法と言えます。
近年、各国において蝕罹患率に地域差があり健康格差(不公平で理にかなわない健康差異)が問題として認識されるようになりました。
2012年7月に厚生労働省が発表した「健康日本21」に健康格差の縮小が盛り込まれたように、すべての国民における歯科疾患の予防が期待される中、フッ化物の応用は最も安全で有効なむし歯予防方法です。
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